防水層の劣化(屋上・屋根)
外壁ばかりでなく、普段見ない屋上も見てみましょう。
屋上は、建物を雨から守るという、傘の役割をまかなう重要な場所です。
その屋上が、はたして建物と私たちの生活をきちんと守れているのか、確認するべきです。
<ごみの堆積>
<写真1>
<写真2>
バルコニーの排水ドレイン付近に溜まったごみ。
樋(雨水を流す塩ビ製などの管)をつまらせないために、排水ドレインにはストレーナーという、穴がたくさん開いたフタをはめます。
このフタが堤(てい)となり、雨水で流されてきた屋上床面のごみがドレインの周りにたまっていきます。
これがひどくなると、雨が降っても雨水が流れなくなり、屋上がプールのような状態になってしまいます。
<水たまり>
<写真3>
ゴムシート防水の排水ドレイン周りが水たまりになっている。ごみの堆積が原因か?
<写真4>
排水ドレイン付近の水たまり。ドレインの高さが原因か?
排水ドレインに雨水がたまる原因として、
●ごみが堆積している。
●床面よりもドレインが高い場所にある。 の2つが考えられます。
写真1,2の「ごみの堆積」は、水たまりを助長します。
通常、屋上床面は緩やかな勾配がつけられているのが基本で、勾配の最下部が排水ドレインです。
排水ドレインまで行った雨水は、そのままドレインの中へ流れていくのですが、ここでドレインやストレーナーが床面よりも高い位置にあると、雨水はたまっていきます。
そして流れることなく、天気がいい時に蒸発するのを待つしかなくなります。
<植物やコケの繁茂>
<写真5>
排水ドレインにたまった汚泥に生えた植物。
<写真6>
ドレイン付近の水下(みずしも)にたまった汚泥と、植物の繁茂
ごみや汚泥がたまれば、そこに植物やコケが生えてくることがあります。
土と水、そして草木にとって太陽の光があれば、そこはもうパラダイスです。
<防水層のフクレ・やぶれ>
<写真7>
アスファルト露出防水が切れて水が入っている。一部植物の繁茂も見られる。
<写真8>
アスファルト露出防水の表層が劣化している。
<写真9>
ゴムシート防水の床面・立上りの取り合いに水がたまっている。
やぶれは、防水層事態の経年劣化、または下地の不具合からくるもの、鳥害などが考えられます。
ふくれは、やぶれた箇所からの雨水の浸入、防水納まりの不具合箇所からの雨水の浸入、水のふくれではなく、下地コンクリートなどからの水分が逃げられなくなって起こるふくれもあります。
経年劣化を除くこれらの不具合は、原因を調査してからどのような対策をとるかが鍵です。
<押えコンクリートの劣化>
<写真10>
押えコンクリートの表面に、白いもの(コンクリートの成分の石灰質)が流れ出している。
<写真11>
押えコンクリートに設置されている目地材が浮き出ている。
押えコンクリートは、防水層を保護するために施工されるコンクリートで、保護コンクリートとも言われています。
下の防水層は守られるのですが、上の押えコンクリートは、写真のように雨水が浸入、目地材の浮き、またひび割れや爆裂などの劣化も見られます。
これらの不具合が顕著になりましたら、改修を考えた方がいいです。
また、通常はアスファルト防水に施されるのですが、写真10ではゴムシート防水のうえに施工されています。
ゴムシート防水や塩ビシート防水などは、アスファルト防水に比べてコンクリートの動きに弱いので、押えコンクリートには不向きです。
コンクリートの下や取り合い部が破れている可能性がありますので、改修を考えた方がいいと思います。
屋上防水の不具合例を、写真でみてきましたが、皆さんもお住いの屋上をご覧になられて下さい。
ひょっとすると、ご自分で何か不具合を発見できるかも知れません。
防水層を見られて何も悪いところがなさそうでも、しっかりと専門家にみていただいて、説明を受けていただきたいと思います。