タイル面の劣化(浮き)
外壁に施されたタイルは、様々な役割を果たします。
先ずは意匠性。
色々な模様の塗装がありますが、やはりタイル張りより見た目がいい仕上げはありません。
そして躯体の保護。
タイルの耐久性は塗装とは比較にならず、建物を永く保護します。
建物の資産価値を保つ為にも、いつまでも綺麗な外観でいて欲しいものです。
しかしながら、塗装面やモルタル面同様、タイル面にも劣化がつきものです。
その中でも危険度が高いのが、タイルの剥離に繋がる「浮き」です。
建物に使用されるタイルは、主に「磁器質タイル」、「陶器質タイル」、「せっ器質タイル」の3種類です。
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磁器質タイル
ここでは一般的な、磁器質タイルを始めに考えましょう。
磁器質タイルとは、表面がガラスのようにツルツルしている、非常に光沢があるタイルです。
なかには表面がごつごつしたものもありますが、基本的にガラスの様な手触りのものが磁器質タイルです。
磁器質タイルは耐候性・耐水性共、非常に高い(吸水率1%以下)ので、外壁面に多く用いられます。
新築時の施工が適切ならば、タイルが下地から浮く可能性は低く、長きに亘り美観を維持します。
磁器質タイルの主な張り付け工法に、張付けモルタルを下地へ塗り付け、タイルを叩いたり、揉み込んだりして張り付ける「圧着張り」があります。
圧着張りは、他の張り付け工法よりも施工が早く、作業性もいいので、簡単に思われるのですが、注意が必要です。
張付けモルタルには、粉末樹脂入りのプレミックスモルタルを使用します。
規定量の水を混合するだけで、安定した性能を維持するのですが、決められた時間内(大抵、1時間以内)で使用しないと、接着強度が落ちて、将来的には剥落の危険性が出てきます。
又、一度硬化が始まったプレミックスモルタルに、再度水を加えて使用すると、接着強度が極端に落ちているので、この場合も何年後かには剥落することになります。
張付けモルタル自体の性能はいいのですが、それを過信し、適切な施工が出来なくなっている人が不具合を引き起こします。
次に陶器質タイルです。
陶器質タイルとは、磁器質タイルのような透明感はなく、ざらざらした感じです。
耐水性が低く(吸水率22%以下)、外壁面よりも内部の壁に使用されます。
吸水率22%以上というものもありますが、内部専用です。
陶器質タイルを外部に使用している建物もたまにありますが、様々な要因で、磁器質タイルよりも、浮きが発生する可能性が高いです。
その要因とは、
●吸水率が高く、タイル自体が水分を吸収するため(表面に吸水性を抑える釉(うわぐすり)をかけるとよい)。
●一般的に45二丁掛(90㎜×45㎜)が多い磁器質タイルと比べて、小口(108㎜×60㎜)や、二丁掛け(227㎜×60㎜)が多い陶器質タイルは、質量が大きいため。
●深目地(タイル表面近くまで目地セメントを施工せず、深い位置に目地を作る事)のため、目地内に水分が浸透し易い。
●寒冷地での外壁への使用は、タイル内に浸透した水分が、凍結して割れを引き起こす。
等があります。
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陶器質タイル
又、せっ器質タイルは、磁器質タイルのようにツルツルではなく、ざらざらした肌触りがしますが、耐水性は高く(吸水率5%以下)、防滑性能を発揮する床面にも使用されます。
陶器質タイル同様、質量が大きいので、剥落の際の危険性は高いです。
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せっ器質タイル
いずれの場合も、外的要因がない限りは、新築時にしっかりした施工がなされていれば、そう簡単に浮きや剥落を引き起こす事はありません。
しかし、タイル面がある建物の大半は、年数が経った時にタイルの浮き・剥落が始まります。
上に記したものの他に、タイルの浮き・剥離には沢山の要因があります。
「手が届く範囲にタイルの劣化が少ないから大丈夫」 なんて決め込まないで、きっちりした調査を行いましょう。
タイル目地に詰められている「目地セメント」も、経年劣化で雨水が浸入し易くなります。
目地からの浸水を抑制する為、タイル面用のクリア材(撥水剤や防水材)の使用も考えてみましょう。
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打継目地のシーリング材の劣化。雨水が侵入してタイルの浮きを発生させることがある。
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タイル間の目地モルタルの劣化。雨水が浸入し、タイルの浮きなどを引き起こす。
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タイル面の最端部がシーリング材やモルタルなどで処理されていない。雨水が浸入してタイルの浮きなどを引き起こす。
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タイル面の浮き。下部を人が通る場合は早急に対処が必要。
補修も正しく行われないと大変な事に・・
→ 「そのタイルの浮き補修、大丈夫ですか?」
タイル張替後に色が違い過ぎないために
→ 「張替えタイルを上手に探す方法」