鉄部の劣化
外壁などの塗装よりもボリュームは少ないですが、神経を使うのが「鉄部の塗装」です。
鉄部材とは、例えば 共用廊下では 「玄関扉とその枠」、配管やメーターが入っている「パイプシャフト(P.Sと呼ぶこともある)」、「天井の照明器具」、「非常ベル」などです。
階段室では、「消火栓の配管や消火栓ボックス」、「防火戸(鉄扉)」、「屋上への鉄製格子」などがあります。
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屋上出入口の鉄製格子戸。発錆とチョーキング(白亜化)が進行している。
新築時、鉄部材は工場から錆止め材を塗られた状態で運び込まれ、現場で上塗りされます。
当初は、鉄部の仕上げ塗料も艶々で、それはもう綺麗なものです。
しかし時間が経つにつれ、徐々に劣化が出てきます。
雨風や紫外線が当たり易いところにある鉄部材は、チョーキング(塗装面が劣化し、チョークの様な粉をふく事)が起こります。
チョーキングが進みますと、塗装内に雨水や外気が進入し易くなり、錆の発生も早く起こします。
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鉄製扉のチョーキング。塗装の成分である顔料が出て来て、指で触るとチョークの粉のように付着する。
外からチョーキング、内から発錆(はっせい:錆が発生する事をいいます)という状態になり、ひどい時には材料に穴が開いてしまう場合もあります。
ですので、大規模修繕工事をやるやらないに関わらず、鉄部塗装は定期的にチェックし、計画的に塗替えを行う事が望まれます。
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錆が進行し腐食が進み、朽ちた鉄扉の枠。劣化の場所によっては非常に危険である。又、取替には多額の費用が掛かる。
又、雨風やチョーキングなど関係なく、発錆が起こる場合もあります。
それは、その鉄部材を製作する際の過程が関係します。
粗悪な材料を使用している場合は然りですが、そうでない場合に錆が出易くなる要因、それは 「加工」です。
鉄は一般的に加工し易い材料で、曲げられたり、穴を開けられたり、切断されたりして、製品になっていきます。
この、「曲げる」、「穴を開ける」、「切断する」という過程を踏むと、応力を受ける為、その箇所だけ弱くなります。
その他にも、鉄部材同士をつなぎ合わせる、「溶接」 の部分も、部材の品質を変えるので、錆び易くなります。
この様な事が原因で、錆止めの処理をしていても、そこが発錆し易くなるのです。
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共用廊下のP.S(パイプシャフト)扉。発錆とチョーキングが進んでいる。曲げ・切断などの加工部が弱くなっている。
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鍵穴廻りの発錆。 開口の際に力が加わり、弱くなっている。
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屋上給水管のラッキング(保温管)。曲げたり、切ったりが多いので、弱くなっている。特にエルボ(曲がり部)の発錆が著しい。
大抵、外気や雨風をシャットアウトしている 「内部階段」 内の鉄部材は、外部のものより劣化が遅いですが、この様な劣化も考えられるため、定期的なチェックは必要です。
「外側は新築時同然に艶々なのに、扉を開けたら錆がひどかった」なんてこともあります。
これをある程度抑制するには、多少強力な錆止め塗料を使用する事が望まれます。
手遅れになる前に、早めの対応を致しましょう。