塗装前の肌合わせ 「なぜ必要か?」
大規模修繕工事の際、劣化補修した箇所は、以前の様な塗装の模様がなくなり、平たくなります。
新規の塗装を塗る前に、この平らな部分を周りと同じ模様になるように加工します。
なぜ、新しい塗装で隠れる部分なのにそんな面倒な事をしなくてはならないのか?
それを知る前に、コンクリートやモルタルに塗られている「塗装面」の劣化についてまずは見てみましょう。
壁面でも天井でも、コンクリートやモルタルが劣化していなくとも、塗装が浮いている、又は剥がれているという劣化があります。
「塗膜の浮き・剥離」 と呼ばれるものです。
これらの補修方法は、劣化箇所を全て撤去してしまい、塗装がなくなってへこんだ部分を、周りの塗装厚みと同じになるように、樹脂モルタルで平らにします。
「劣化した塗装を剥いでから新しい塗装で仕上げるんだから、樹脂モルタルとやらの出番はないのでは?」という質問を受ける時があります。
確かに、下地のコンクリートやモルタルが劣化している訳ではなく、別段補修の必要がなさそうですが、そのままの状態で新しい塗装を塗ると、塗装を剥いだ場所がクッキリ分かります。
新規の塗装が厚付けではない天井などはもちろんのこと、新規の塗装で厚く模様づけする壁の様な場合でも、補修箇所は目立ちます。
これは非常に見た目が悪く、「建物価値」を簡単に下げてしまいます。
「塗膜の浮き・剥離」という劣化は、樹脂モルタルで平らにすることで、冒頭でお話しした劣化と同じ土俵にあがります。 ここで 「なぜ、補修箇所はわざわざ周りの旧塗装面と同じ模様になるようにかこうするのか?」 について説明します。
天井については分かりやすいです。
新築時、天井(軒天ともいう)はリシン吹付といって、砂粒がパラパラと塗装に混じって仕上げられているような外観をしているのが一般的です。
補修箇所は、砂のパラパラがなくなり、平らになります。
このまま軒天仕上げ専用の塗装を行っても薄塗りしかしないので、当然「砂粒上のところ」と「平坦なところ」に分かれてしまいます。
そのあと、天井専用の塗料(これは壁面に塗る材料に比べ、薄く塗ります)を全体に塗ると、粒々と平らな所がはっきりと分かります。
応急処置ならばそれでいいと思われますが、大規模修繕となればきっちり直したいものです。
そこで、補修して平らになった箇所にスプレーガンにて粒々を吹き付ける肌合わせ(模様付けのことです)を行い、周囲の模様に合わせます。
そのうえで新しい塗装をすると、全体的に砂粒状の仕上がりになります。
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天井ひび割れ 補修跡の肌合わせ。
<写真>
ひび割れ補修の後、マスチックローラーによる肌合わせ。
ここで壁面塗装を考えます。
なんの模様もない平坦な壁の劣化ならば、補修して平坦にすればその上から塗装しても、全体的に同じような仕上がりになります。
問題はそれ以外の、模様が付いた壁面です。
新しい塗装は、下地調整材を事前に厚付けして、仕上げのウレタン系塗料やシリコン系塗料などを塗る事が多いです。
この下地調整材の厚付けというものは、それ自体が新しい塗装の仕上げの「模様」になるもので、良いようにも悪いようにも仕上がりを左右するものです。
この下地調整材の模様が「厚い」からといって肌合わせを怠ると、なぜか補修跡がしっかり出てきます。
唐突ですが、海を思い浮かべてみます。
水深があるところですと、波の波長は緩やかなのに、浅瀬では波長が短くなり、波がぎざぎざになることもあります。
ちょっとだけニュアンスが異なりますが、塗装もこれと同じ様に、下地の具合によって、模様が大きくなったり細かくなったりしてきます。 しかもこの違いは、結構目立つものなのです。
補修工事をあまり理解していない状態で工事を請けた業者さんが、よくやってしまうことなので、壁面も天井面も、しっかり肌合わせ(模様付け)を行い、建物価値の維持に努めましょう。
文章がわかりにくくて、大変申し訳ありません。
もっと分かりやすいものを書けるよう、精進いたします。