防水施工の不具合(シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水)
工事業者からみて、「こりゃないだろう」と落胆してしまうような防水仕上げを目にすることがあります。
今回はシンダーコンクリートへの塗膜防水について見ていきます。
<シンダーコンクリートへの塗膜の密着工法>
<写真>
ルーフバルコニー、シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水密着工法を施したあとに、ふくれや破断が生じている。
<写真>
シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水密着工法を施した後、防水層が破れている。
<写真>
ルーフバルコニー、シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水密着工法を施した後に、ふくれが生じている。
上の写真は、シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水を「密着工法」で施した後で起こった不具合です。
既存がシンダーコンクリートの場合、防水層は保護されているので、改修時期は他の防水層よりも遅くてもいいと思います。
しかし、シンダーコンクリート自体の劣化が進んでいるとき、またはどう見ても下の防水層が劣化していると判断される時は、新規で防水工事を行います。
この時、気を付けたいことは、シンダーコンクリートは「長年の雨水で、水分を多く含んでいる」ということです。
ここで新しい防水層を押シンダーコンクリートに完全に密着させてしまうと、中の水分は逃げ道を失い、蒸気になって上の防水層をふくらましたり、ひどい時はやぶることもあります。
次の写真を見ていきましょう。
<写真>
シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水を施したあとで、伸縮目地であろう場所からコケが生えてきた。
<写真>
シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水を施したあとで、伸縮目地であろう場所がひび割れてきた。
<写真>
シンダーコンクリートの上にウレタン塗膜防水を施したあとで、伸縮目地であろう場所がひび割れて、浮いてきた。
シンダーコンクリートには、およそ3メートルごとに伸縮目地があります。
これは、温度差による「伸び縮み」の影響で、コンクリートにひび割れが起こるのを防ぐために設けられています。
新築当初、この目地にはアスファルトを成分とした「エラスタイト」という材料や、ポリエチレンやゴムなどを成分とした「成形目地材」が設置されていますが、時間が経つと劣化してきたり、水分を吸収していたりしているので、改修工事の際は、撤去したほうがよいです。
これを撤去せずに、新しい防水層を設置してしまうと、上の写真のように目地の部分がいち早く劣化していくので、必ず撤去してシーリング材で埋める、各メーカーが提供する「改修用の目地板」を設置するなどの処置が必要です。
以上のことから、
●シンダーコンクリートの上に新規の防水を施工する時は、通気層を作ることが出来る 「通気緩衝工法」を行う。
●伸縮目地は、古い目地材を撤去し、改修用の目地板を設置するなどの処置を行う。
などの考慮が必要です。
内部の水分を外部に逃がすための、脱気筒などの脱気装置も忘れない様にしましょう。
施工したときは、大概の工事はうまく納まり、きれいに見えます。
しかしその施工が正しいかどうかが、「年数が経ってからでないと分からない」では意味がありません。
自分がそこに住んでいる人間だという感覚で、仕様選定・作業を行って頂きたいと思います。
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