防水施工の不具合(アスファルト防水の上に塗膜防水)
工事業者からみて、「こりゃないだろう」と落胆してしまうような防水仕上げの不具合を目にすることがあります。
どんなにいい防水材で、どんなにいい防水施工を施しても、下地との相性を考えていなければ意味がありません。
今回はアスファルト防水の上に塗膜防水を施工した事例について見ていきます。
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アスファルト防水の上に、セメント系塗膜防水を施工した数年後の様子。黒い箇所は、アスファルト防水の成分がセメント系塗膜防水表面に出てきたものと思われる。
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アスファルト防水の上に、セメント系塗膜防水を施工した数年後の様子。アスファルト防水層の継ぎ目と思われる箇所などにひび割れが生じ、劣化が始まっている。
上の写真は、アスファルト防水露出工法(露出とは、上に押えコンクリートなどの保護層がないこと)の上に、セメント系の塗膜防水を密着で施工した数年後の様子です。
相性が良くなく、セメント系塗膜防水がアスファルトの成分を吸収してしまい、早期に劣化してしまうという実例です。
黒くなっているところは、アスファルトの成分が塗膜防水の表面に出てきているものと思われます。
アスファルト防水の上に塗膜防水は不向きと考えたほうがいいと思います。
今は改質アスファルト系の塗膜防水も出ていますが、施工性は改善の余地があります。
施工現場の状況等を把握し、メーカーと協議することをお勧めします。
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アスファルト防水を撤去した後にウレタン塗膜防水を施工した現場。数年したらいたる所が劣化してきた。
上の写真は、新築当初にアスファルト防水で仕上げられていて、それを撤去したあとでウレタン塗膜防水の密着工法を施した屋上です。
撤去後にそのままウレタン塗膜防水を施工したので、アスファルトの成分が残っていて、それがウレタンの防水層へ浸食しているものと思われます。
撤去に時間と費用を費やし、施工方法を間違えれば元の防水のままのほうが良かったという結果になりかねません。
もし既存の防水層を撤去して新しい防水を施工するならば、撤去後の下地調整を施します。
樹脂モルタルを薄付けし、一度下地をリセットすれば、新しい防水も下地の影響を受けにくくなります。
防水改修するときは、いくらいい仕様を選定しても、それが下地に合っているかどうかで、良い防水層になるか否かが決まります。
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